手術の日 1
H25年2月28日
手術は午後1時半からの予定なので、当然、食事は昨夜の夕食が最後、
飲み物も朝8時までである。
でも、あまりおなかはすかないし、喉も乾かない。
早めに弾性ストッキングを履き(履きにくいので看護師が手伝ってくれた)、
手術着に着替えた。
(弾性ストッキングは、下肢静脈の静脈瘤などを防ぐために履く。)
時間はまだまだあると思っていたが、何かと準備があるので意外と早く
過ぎていく。
正午までに、旦那さんと母や身内がやってきた。
この段階で、前の人の手術が順調なので、たぶん予定時刻通りに
手術になるとのこと。
時間まで他愛のない話をし続けていたような記憶がある。
そうこうしているうちに、ついに点滴がつながれた。
ああもう、いよいよなんだな、と実感した瞬間だ。
ほどなくして、とうとう「行きましょうか~。」と、お呼びがかかった。
血圧や体温などを測った後、部屋の外まで歩いて行って、
準備されていたストレッチャーによじ登った。
この時、旦那さんと目が合ったので「行ってくるわ。」と目で合図すると、
「うん。」という返事があった。
「動きますね~。」との声とともに、ストレッチャーが動く。
うわ、目を開けたままだとめまいがしそうだ。
エレベーターを待っている時に、「あれ、ご主人は?」と看護師が言ったが、
あの人は見送らない人なので「いいですよ~。」と答えた。
手術室のある階まで母がついてきて、部屋に入る寸前に手を出してきたので、
寝たままでタッチした。
そういえば、母が最初に大きな手術を受ける時、手術室へ入る直前に
軽く手を握ったことがあったっけな・・・。
あの時、母は軽く手を握りかえして手術室へ入っていった。
ところで、ストレッチャーごと移動するのは、不思議な感覚だ。
視界だけがどんどん変わっていく。
電車や車の窓から見える風景の見え方とは、違う。
寝たままだと、見える範囲が広い割には自分の下半身の感覚が薄い。
だから目が回りそうになるのかもしれない。
手術室のある階は、全体にペールグリーンを基調とした内装だった。
手術室の手前で
「お願いしまーす。」とそこで病棟の看護師が手術室の看護師と
交代した。
手術室の中に入ると、ここもまた、少し薄暗いペールグリーンの部屋だった。
「こんにちは!」と昨日来た看護師が声をかけてくれた。
私は少し微笑んだ。
なんとなく心細い気持になっていたので、その笑顔で安心できた。
名前の確認をしたあと、いよいよ硬膜外麻酔をするという。
海老みたいに身体を曲げて、背骨の中に針を入れるんだっけ?と思いながら
「はい、身体を曲げてくださーい。」との声とともに身体を曲げた。
「じゃあ、これから針を入れますね~。ちくっとしますよ~。」
身構える私の背に、指で場所を確認した感触があり、針が入った。
ぎゃー! い、痛いっ! 「ちくっと」どころじゃない!!
・・・想像していたより、痛いよ、これ・・・。
その昔、膝にたまった血を抜いた時とか、同じく膝あたりに造影剤を入れた時が
今までの中で最高の痛みだったのだが、硬膜外麻酔の痛みが一気に1位になった
瞬間だった。
そして、その痛みは1度だけではなかった。
なんと3回も針を刺されたのである。
理由はわからない。1度だけじゃなかったんだ・・・と呆然としながら、
もう4回目はないよね?と思っていた所へ、
「じゃ、麻酔が入りまーす。」と声がした。
まだ体は曲がったままだったが、腕になんとも言えない痛みを感じた。
硬膜外麻酔の想像以上の痛みで泣きそうになっていたので、
早く手術が終わらないかな、と思った瞬間、そこから私の記憶はなくなった。