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子宮内膜症→チョコレート嚢胞(ここまで自覚なし)→明細胞腺がん発覚。今は経過観察中。ふだんは漫画やアニメの話題など。

術後1日目

 

H25年3月1日

 

やっと長い夜が明けて、看護師が心電図のモニターを取ってくれた。

「これがうっとおしかったんだよね~。」と言いながら。

それは1か所だけではなく、3か所ぐらいついていたのだ。

普段ならなんとも思わないのかもしれないが、非日常な時は

片っぱしからいろいろな事が気に障るような気がする。

・・・それはともかく、心電図モニターをとってもらったのに

まだ背中にある物体はなんだろう?

昨夜からずっと気になっていたのだが、たぶん硬膜外麻酔のチューブか

何かだろうか?と思った。が、それにしては太すぎるような気がする。

娘がつけていたPCAのチューブは、もっと細かったはず。

いやいや、病院によって使われる器具が違うのかもしれないし、と

えんえんと考え続ける。

 

そう、とにかく時間がたつのが遅く感じられたのだ。

傷の痛みはあまり感じなかったが、とにかく体の違和感を

どう表現していいのか分からない。

特におなかの中が、少しだけ体の向きを変えようとするたびに

雪崩を打つような感じで動く感覚がして、気持ちが悪いことこの上ない。

子宮と卵巣と卵管と加えて嚢胞プラスαを取ったところへ、

腸が収まろうとしているのだとかなんとか・・・えええ、思ったより

人体の中はゆるくできているのだな。

(後日、筋肉も取っていると聞いて仰天した。

子宮は筋肉のハンモックで支えられているらしいが、それも切ったらしい。)

 

 

それでも体の向きをなんとか落ちつけようと四苦八苦していると、

今度は採血をしに看護師がやってきた。

採血はすぐに終わる。

また私はとりとめもなく考え続けるのだが、そのうちに睡魔が

やってきて少し眠った。

 

外がほどよく明るくなってきた時点で、看護師か看護助手が

「これで顔を拭いてね~。」と言いながらタオルをベッドの柵に

かけてくれたので、それで顔を拭いた。

 

しばらくするとまた看護師がやってきて、点滴バッグを取り替える時に、

腕に注射された。

血栓を予防する注射で、これは朝晩打つらしい。

うーん。しばらく注射とは縁遠かったのだが、これは仕方がない。

もう、素直にどうぞと腕を差し出す。

 

水が飲める、とのことだったので、流し台脇に出しておいた

コップに水を入れてもらった。

口をすすぎたかったが、とりあえず飲んだ。

久しぶりの水だ。おいしい。

 

看護師が来ない間に、うつらうつらとする。

が、朝は人の出入りが激しい。

お茶の配給やごみ回収、掃除の人が入れ替わり立ち替わり

やってきて、意外と寝られない。

 

かなり外が明るくなってきた頃、看護師が二人連れでやってきて、

「体を拭きましょう。」と言った。

着替えはロッカーを開けて出してもらって、二人がかりで体を拭きつつ

着替えも済ませた。

と、その時に背中の異物がなんなのか判明した。

なんと、それは体温計だった。

「あらっ!?」と看護師は思わず声をあげていた。

そういえば、麻酔から覚めたばかりの時、体温計を2回はさまれたような

記憶があるが、その時のものが1本残っていたらしい。

むむ~。体温計だったのか・・・。

 

さっぱりしたあとで、母がやってきた。

母は時計を持ってきてくれていて、それをベッド脇にあるテレビがついた

ワゴンに置いてくれた。これはかなり助かる。

 

それからは起きている時はぼちぼちと母と話をして、また眠る、という

繰り返しをしていたが、看護師が「尿の管を抜いてみましょうか?」と

ついに言ってきた。

「手術の翌日には導尿の管を抜いて、トイレまで歩く」というのは、

入院した時にもらったスケジュール表にも明記してあるし、

ブログの記事でも読んでいたのである。

 

私は、それを帝王切開の時と同じように思っていた。

が、違った。大きく違った。

帝王切開後は、傷の痛みと、赤ちゃんと羊水その他もろもろを

とりだしたがために起こるバランスの崩れぐらいの変化しかない。

実際、私が帝王切開を受けた後に尿導カテーテルを抜いた後は、

おなかの傷の痛みと多少のふらつき程度ですぐにトイレに

行けるようになったので、甘くみていたのだ。

 

導尿の管はすぐ抜ける。

「トイレに行きたくなったらナースコールしてください。」と言われたので、

ナースコールした。

看護師の声掛けのもと、体を起こした。

硬膜外麻酔のチューブにつながっている痛み止めの器具が入った袋を首から下げて、

ゆっくりと立ちあがって、点滴台に心もちもたれながら歩いた。

そこまではよかったのだが、問題は用を足す時だった。

尿意があるようで、ない。

しかも座っているうちに突然、下腹部全体が熱くなって座っていられなくなった。

私はベッドに戻ったのだが、その途端、なんとも言えない痛みが襲ったのである。

おなかの中を、いきなりつかまれてもみくちゃにされているような感じ。

ぎゅうっと圧迫感もあって、それがとてつもなく痛い。

思わずうなり声が出る。

横になってみるとかえって痛くなったので、ベッドに座ったままでなんとか

痛みをやりすごすのだが、どうにもおさまらない。

そのうちに脂汗が出てきて、こんな事になるとは思っていなかった私は

軽くパニック状態になっていた。

痛みがましになってきたかと思って横になろうとすると、また痛みが

ぶり返すので、あわてて座り直す。

しばらく座ったり横になったりを繰り返しているうちに、

ようやく痛みがおさまってきたので、私は疲れて少し眠った。

 

2度目の尿意を感じた時も同じように痛みを覚えた。

もう、とにかくこのおなかの中の痛みが去ってくれることだけを考えた。

それ以外は何も考えられなかったし、そういう余裕もなかったのだ。

あまりにも痛がるので、看護師がまた導尿カテーテルをつけてくれた。

すると、そこそこの量の尿がすぐにバッグにたまった。

トイレに行くことができなければ、退院が延びるかもしれない。

それは嫌だったが、今の現状ではどうすることもできない。

だが、同時にカテーテルが入ってほっとした自分もいた。

明日はトイレに行けるようになりたいな・・・と、ぼんやりと考えた。

 

トイレ騒動が落ち着いたのもつかのま、次は食事である。

夕食から食べられるとの事だったが、ベッドを上げて座るだけでなんだか

体がふわふわしていた。

そのうえ、目の前の食事を食べるように準備された時は、ちょっとつらかった。

口をすすいでも、食欲がないのである。

が、重湯とおかずを少しだけ、食べてみる。

重湯のほのかな甘みがとてもおいしく感じられたが、量はあまり

食べられなかった。

 

おなかの中の違和感は依然としてあったが、痛みがないだけまだましかな、

と思った。

 

しかし意外と寝られない。

疲れているはずなのに、眠れない。

それでもうつらうつらとしていたらしく、点滴バッグを替えに来た

看護師の気配で目を覚ましたりしていた。