「虐殺器官」
観終わってからずっとつかみどころのないもやもやとした気持ちがあって、
それは作品自体に対してではなく、内容に対してのものだと、
やっと思い当たった。
それと同時に、原作の小説を読んだ時、ラストで感じた寂寥感を思い出した。
もやもやしたその内容とは、今世界のどこかで実際に起こっていて、
さらに作品世界のようなことが現実に起こりそうなことだから、である。
外からの暴力に怯えるあまり、セキリュティをいくら厳しくしたところで、
抜け道は必ずある。
そして、思わぬ「虐殺器官」によって、いとも簡単に世界は変わってしまう。
正義のもとに行われる、生身の人間に対する処置は、
精神というものを舐めすぎてはいないだろうか。
実際に作戦行動を行い、現地での自分と仲間、そして「敵」の姿を
見つめ続けた主人公は、だからこそ想いを寄せた人物の遺言と重ねて、
自分自身を取り巻く世界を変えたのだ。
作品は、小説をうまく映像化していて素晴らしかった。
一度制作会社が倒産してしまって、公開どころか製作が頓挫してしまうのでは?と
やきもきしたが、無事に公開まで辿り着いてなにより。
ところで予告編を見て、ただグロいシーンがたくさん出てくる軍隊もの、と
思われていたらそれはかなりもったいない気がする。
現に娘たちはTVのCMを見てかなり嫌がっていたので、
そう思っている人は他にもいるかもしれない。
でも、気になるのなら、観て損はないと思う。